ライティアン様式
WRIGHTIAN巨匠ライトの建築思想

緩い勾配の寄棟屋根で、デンティル(歯型刳型)の付いた庇が大きく張り出している。棟全体にわたるテラス、バルコニーを採用し、屋外空間と屋内空間の連続性を重視。横の線を強調する石積み・レンガ積み、フレンチドア、天井から床までの背の高い窓など、水平と垂直を強調しながら「箱」型の単純さを打破している。

 フランク・ロイド・ライト(1867-1959)は古典建築に対するデザインの革命児である。彼は、当時の古典建築がその形態自体のプロポーションにこだわり、その住宅が建てられる立地環境や使用される材料・工法を軽視し、居住者のライフスタイルへの配慮が欠如していると批判してきた。
 「私は常に民主主義の建築として、自分の作品を取り扱ってきた。個人の自由こそ、社会と政府へ最大の働きかけをする動機となるものである。建築は生活である。少なくとも建築は形態をもった生活そのものである。それゆえ、建築は生活の最も正しい記録なのである」というライトの考え方は、日本で言う「足にあわせて靴をつくる」と同じ主張である。彼は以上の考え方を、建築の4つの基本概念としてまとめている。
(1)土地と建物と一体で価値をつくる
(2)材料と工法それぞれが担う文化を尊重
(3)住人の暮らしに合わなければただの「箱」
(4)住人の特性・個性を明確に表現する
 ライトの建築の中で「落水邸」は特に有名であるだけでなく、その考え方を完全に表している。地形に合った計画、材料・工法を適材適所に使い、そこでの生活に合った空間をベースにした建築形態の構成により、利用者に自由な空間の豊かさを提供している。
 このようなライトの仕事は、名人にしかできないデザインであるため、ライティアン様式(ライト様式)と呼ばれるものは、様式というよりもむしろ、その立地ごとに創造的に展開されるデザイン開発の思想とも言うべきものである。日本で俗に「ライト風」と言われるのは、ライトのデザイン要素であるパラペット付きバルコニーなどを失敬した「似て非なる」デザインであり、ライト様式とは言えない。
 ライトは自身の作品を説明するために「有機的(オーガニック)」という言葉を用いた。この言葉の正確な定義は存在しないが、すべての偉大な芸術の中心にあるべき品質、とでも言うべきものである。