• 門扉の照明は大型のものをアメリカから輸入して設えている。これは威風堂々とした佇まいと美しくバランスを取るためだ。どこから眺めると、どのように見えるかをしっかりと考え抜くことで、隙のないデザイン性の高い住まいが完成する。

  • 日が沈み、ゆるやかに夜の帳が下りてくる。太陽の光を一身に浴びていた佇まいは、今度は自ら放つ輝きによって包まれる。コントラストがきいたフォルムは、まさに華麗という言葉がふさわしい。

  • 高級感溢れるコラムがO邸の象徴的存在。扉を開けるとホールが広がり、その先にはパティオが顔を覗かせる。

  • O邸のもうひとつの顔であるパティオ。建物に囲まれていることもあり、開放的すぎないところが心を落ち着かせる。風に揺れる葉の音、そして鳥の声しか聞こえない、穏やかな空間である。

  • 大理石が美しい玄関ホール。空間が単調にならないように一部をモザイクタイルでデザインした。アイアンの模様もすべてオリジナルで、職人による手づくり。美しいモールディングにシャンデリアがよく似合う。

  • インテリアコーディネイトは、上質な住まいづくりにおいて欠かせない。バランスが良く、上質な暮らしをするために、家具だけでなく食器類までトータルコーディネイトしている。

  • 吹き抜けのホールに足を運ぶと、思わず天井を見上げたくなる。そんなときに格式高いデザインが目に飛び込んで来たら、ゲストはどんな言葉をつぶやくのだろうか。そういったシーンをイメージしながらデザインを施していく。

  • メインベッドルームは、「ヨーロッパのホテルで過ごした素敵な時間を住まいでも」という思いからデザインされたという。窓からやさしい光が差し込み、空間全体をやわらかく包んでくれている。

  • パウダールームは、デザイン性はもちろん、暮らしの機能性も十分に計算し、収納スペースもしっかりと計画している。木目調の収納が家の雰囲気ともよく合い、全体に統一感を生み出している

  • バスルームからは直接パティオに出ることができる、開放的なつくりが特徴。O邸は豊かな自然がプライバシーを守ってくれるロケーションなので、パティオ自体がバスコートの役割も担ってくれるのだ。

気品あるファサードの瀟洒な佇まい

最高なロケーションと最高な家の見事なコラボレーション

 住まいの美しさは、もちろんデザインや用いられる素材で決まる。しかしながら、住まいをより美しく引き立てるには、もうひとつ大切な要素がある。それはロケーションだ。O邸は、周囲を緑に囲まれた広大な敷地に佇んでいる。高い建物や人工物が見えることもなく、自宅裏の森を抜ければ海が広がる素敵な場所だ。そのロケーションを生かし切り、以前に訪れたヨーロッパの地で目に焼き付いた美しいヴィラをモチーフにした住まいをつくりたい。まるで北イタリアにいるような雄大で豊かな雰囲気に包まれた暮らし。それがOさんの希望だった。
 一級建築士事務所『参會堂』との出合いは、ある雑誌を見てのこと。同社が手掛けた住まいの上質で瀟洒な佇まいや、そこから醸し出されるヨーロッパの香りに、「自分自身の感性をしっかりと受け止め、理解してくれる」と確信したという。
 O邸は、ふたつの顔を持つ。ひとつは、格式があり、ゴージャスであること。ゲストを迎えるファサードは、屋根を見せないデザインにすることで、見る者に圧倒的な迫力と印象を与える。その前に広がる庭は、素材を変えることで対称性のあるパターンを生み出し、まるでフランス式庭園のよう。吹き抜けのホールにはサーキュラー階段や美しいモールディング、煌びやかなシャンデリアが待ち受け、人々の心をまさにハイソサエティーな異国の地へと誘ってくれる。
 もうひとつの顔は、心を解きほぐしてくれる安心感だ。O邸はホールを抜けると、それまでとは違ったカジュアルさが感じられるパティオが広がる。目の前には森があり、建物によってコの字型に囲まれていることもあって、開放感の中にも誰かにそっと、そして力強く守られているような気持ちにさせられる心地いい空間となっているのだ。まさにロケーションを生かした設計だ。『参會堂』の代表である海老原氏は、「住まう人のセンスがいい仕事を生み出し、楽しさの共有がいい家を生み出す」と語る。O邸も、幾度となく会話を重ねた結果、生み出されたもの。ヨーロッパデザインの本質を知るOさんと、本場の暮らし、用いるべき素材、インテリアまで知り尽くした海老原氏の感性が融合した住まい。本物を追求し、住まう人のこだわり、そして土地が持つ特性などが見事に調和することで、豊かな暮らしが紡ぎ出されるのである。

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